【暗号資産】自民党内から申告分離課税を求める提言【税制改正】

2023/04/14

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【暗号資産】自民党内から申告分離課税を求める提言【税制改正】

さとうささらです。

2023年4月6日、自民党デジタル社会推進本部web3プロジェクトチームがweb3ホワイトペーパーをとりまとめました。

この記事では、主に日本の暗号資産税制の現状と、web3ホワイトペーパーで提言されている内容を解説します。

web3ホワイトペーパーとは

web3ホワイトペーパー
引用元:https://www.taira-m.jp/2023/04/web3-2.html

今回のweb3ホワイトペーパーは、2022年3月にとりまとめたNFTホワイトペーパーに続く形で発表されたものです。

web3ホワイトペーパーは、次の3つの項目で構成されています。

  1. 事業遂行上のボトルネックとなっており直ちに解決に向けて取り組む論点
  2. web3エコシステムが発展し広く普及することを見据えて今から議論を開始・深化すべき論点
  3. NFTホワイトペーパー提言の進捗モニタリング

特に1つ目の項目に含まれる日本の暗号資産税制の問題は、日本の投資家や事業者の重い負担になっており、早急な改正が求められています。

これまでにも、2022年9月7日に一般社団法人新経済連盟が「暗号資産に関する2023年度税制改正要望」を政府に提出したり、2022年11月16日に一般社団法人日本ブロックチェーン協会(JBA)が「暗号資産に関する税制改正要望」を政府に提出するなど、暗号資産税制の改正に向けて業界団体からの働きかけはありました。しかし、申告分離課税の導入や暗号資産同士の交換時における課税の撤廃などは実現していません。

今回発表されたweb3ホワイトペーパーは自民党デジタル社会推進本部web3プロジェクトチームがとりまとめており、与党である自民党内部からの提言となっています。自民党デジタル社会推進本部の本部長は平井卓也衆議院議員、web3プロジェクトチームの座長は平将明衆議院議員であり、ベテラン議員がweb3プロジェクトチームを主導しています。

日本の暗号資産税制

日本の暗号資産税制

日本の暗号資産に対する税制の問題点を紹介します。

雑所得で課税される

2023年時点において、日本では暗号資産取引から生じた所得は雑所得で課税されます。雑所得で課税されると、住民税10%と合わせて最高税率は55%となり、諸外国に比べて厳しい税制のため投資家や事業者の海外流出が増加しています。

雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得をいいます。

雑所得で課税された場合の税率は次のようになります。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から   1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から   3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から   6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から   8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

暗号資産取引で1億円以上の利益を出した人を億り人と呼びますが、2017年には多数の億り人が誕生しました。1億円を超える利益が出た場合、最高税率の55%が課されると手元には半分ほどしか残りません。暗号資産で多くの利益が出た場合、税金のかからない国へ移住したくなるのも当然の話と言えるでしょう。

web3プロジェクトチームはweb3ホワイトペーパーで、この税率が高い問題を解決するために次の提言をしています。

  • 暗号資産の取引に係る損益を申告分離課税の対象とすること
  • 暗号資産に係る損失の所得金額からの繰越控除(翌年以降3年間)を認めること
  • 暗号資産デリバティブ取引も同様に申告分離課税の対象にすることが検討されるべき

暗号資産取引が申告分離課税の対象となった場合、税率は20%になります。例えば、暗号資産取引で1億円の利益が出た場合、現状の雑所得で課税されるとおよそ半分の5000万円ほどしか手元に残りませんが、申告分離課税で課税されるとおよそ8000万円が手元に残ります。

5000万円と8000万円の差は大きいなあ。

次に、暗号資産取引では同じ年の取引であれば損益通算は可能ですが、年をまたいだ損益通算はできません。年をまたいで損益通算することを繰越控除といいます。

【繰越控除ができない場合】
2020年:100万円の損失(税金なし)
2021年:100万円の利益(税金発生)

【繰越控除ができる場合】
2020年:100万円の損失(税金なし)
2021年:100万円の利益(昨年の損失と今年の利益を相殺して税金なし)

繰越控除ができた方が投資家にはありがたいのね。

暗号資産同士の交換に所得税がかかる

2023年時点において、日本では暗号資産同士の交換には所得税がかかります。

  1. 100万円で1BTCを購入(1BTCは100万円)
  2. 1BTCでETHを購入(1BTCは200万円)

この場合、1BTCでETHを購入した時点で、ビットコインの値上がり分の100万円に対して課税されます。しかし、手元にはETHがあるだけで、税金として納める円はない状態です。

税金を納める時、円がないと困るなあ。

web3プロジェクトチームはweb3ホワイトペーパーで、このような場合、法定通貨を取得しないため税務申告の妨げになっているとして、次の提言をしています。

暗号資産取引に関する損益は、暗号資産同士を交換したタイミングでは課税せず、保有する暗号資産を法定通貨に交換した時点でまとめて課税対象とすることが検討されるべき。

暗号資産は、BTC建てで取引することも多く、暗号資産同士の交換に課税されている現状では、税金の計算が複雑になりすぎて、現実問題として正確に計算することができない状況となっています。

web3ホワイトペーパーの提言にあるように、保有する暗号資産を法定通貨に交換した時点でまとめて課税されるようになれば、税金の計算がかなり簡略化され、暗号資産取引が活発化して、結果として税収が増えるという試算もあります。

海外の暗号資産税制

海外の暗号資産税制

海外の暗号資産に対する税率を紹介します。日本の税率と比較しながら見ていくと、いかに日本の税率が高いかが分かると思います。

ポルトガルの暗号資産税制

ポルトガルでは、暗号資産を支払い手段の一形態として捉えており、個人が暗号資産取引で得た利益には課税されません。法人に対しては一定の課税がなされます。

マレーシアの暗号資産税制

マレーシアでは、暗号資産を資産とみなしておらず、個人の場合は暗号資産の売却益に課税されません。

シンガポールの暗号資産税制

シンガポールでは、暗号資産の売却益には課税されません。

ドイツの暗号資産税制

ドイツでは、取得したビットコインなどの暗号資産を1年以上保有して、その後売却して利益が出た場合、所得税がかかりません。

韓国の暗号資産税制

韓国では、暗号資産の売却益が250万ウォン(約25万円)以上の場合、20%の課税がなされます。この税制は2022年から施行予定でしたが、2025年に延期されました。

アメリカの暗号資産税制

アメリカでは、取得した暗号資産を1年以上保有して、その後売却して利益が出た場合、0%から20%までの範囲で課税されます。

スペインの暗号資産税制

スペインでは、暗号資産の売却益に対して19%から23%の範囲で課税されます。

フランスの暗号資産税制

フランスでは、個人投資家による暗号資産の売却益に対して30%の課税がなされます。暗号資産同士の取引については非課税です。

まとめ

世界各国の暗号資産における税率

いかがだったでしょうか。

日本の暗号資産税制は世界各国と比較しても飛びぬけて税率が高く、暗号資産やWeb3の発展の妨げになっているという現状があります。

この現状を改善すべく、今回自民党デジタル社会推進本部web3プロジェクトチームがweb3ホワイトペーパーをとりまとめて発表しました。一気に提言通りにはならないと思いますが、改善に向けて着実に進んでいってほしいと思います。

みなさんは、日本の暗号資産税制についてどのようなお考えをお持ちですか?よろしければコメントをいただけると嬉しく思います。

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