JBAによる税制改正要望の内容とアンケートの結果を紹介【税金・雑所得・申告分離課税】【仮想通貨・暗号資産】

2023/07/31

この記事をシェアする
  • B!
JBAによる税制改正要望の内容とアンケートの結果を紹介【税金・雑所得・申告分離課税】【仮想通貨・暗号資産】

今回は、2023年7月27日にJBA(一般社団法人 日本ブロックチェーン協会)が、暗号資産に関する税制改正要望を日本政府に提出したので、その内容と要望を提出するにあたり資料とするためにとっていたアンケートの結果を紹介します。

この記事を読むと、税制改正要望の内容、アンケートの結果を知ることができます。

税制改正要望の内容

税制改正要望の内容

今回、JBA(一般社団法人 日本ブロックチェーン協会)は、暗号資産に関する3つの税制改正要望を日本政府に提出したので、1つずつ紹介していきます。

引用元:https://jba-web.jp/cms/wp-content/uploads/2023/07/20230728_jbazeisei.pdf

要望1

まず、1つ目の要望を紹介します。

要望1:第三者発行による暗号資産を保有する法人への期末含み益課税の撤廃

第三者発行による暗号資産を取得した法人が保有する短期売買目的以外の暗号資産に対する課税方式を、期末の時価評価による課税から帳簿価額による課税とすること。4.1.2.の類型に該当するような事業目的は自己発行以外に第三者発行による暗号資産の保有が不可欠であるため、その保有目的の類型化の案としたい。この改正により現在 web3 事業への大きな参入障壁となっている問題を解決し、web3 人材の国外流出を食い止め日本国内で web3 事業の活性化を促すこと。

これまでの日本の税制では、企業が暗号資産を保有している場合、期末に含み益が出ていると課税対象になっていましたが、2023年6月20日に日本の国税庁は通達を出して、企業が自社発行した暗号資産については、条件を満たせば時価評価の対象から除かれることになりました。

しかし、第三者発行の暗号資産を保有している場合は、これまでと同じように課税されるという問題が残っているので、今回の1つ目の要望はこの問題の改善を求めたものとなっています。

第三者発行による暗号資産の事業への活用の検討とその内訳

こちらのグラフは、第三者発行の暗号資産の活用法と活用数、または活用を検討している数を表示したものです。第三者発行の暗号資産は、PoSノード運用、研究開発、トークン投資での保有が多いことが分かります。

要望2

次に、2つ目の要望を紹介します。

要望2:申告分離課税・損失の繰越控除の導入

個人の暗号資産取引にかかる利益に対する課税方法を、雑所得の総合課税から申告分離課税に変更し、税率を一律約 20 %とすること。また、損失を出した年の翌年以降 3 年間、その損失を繰り越して、翌年以降の暗号資産に係る所得金額から控除することができるようにすること。暗号資産デリバティブ取引についても同様の扱いとすること。なお、頻繁に海外・国内の業者間で暗号資産の移管が行われる暗号資産交換業者にとって、顧客の暗号資産の取得価格を手に入れることは困難であることから、源泉分離課税ではなく申告分離課税を要望する。

2つ目は、以前から要望の多い申告分離課税の導入と損失の繰越控除の導入の要望です。特に申告分離課税は税率が一律20%となり、現在の雑所得による最高税率55%から大きく税率が下がるため、導入が強く望まれています。

国内の暗号資産口座数(重複あり)

こちらのグラフは、国内の暗号資産口座数を表示したものです。2023年3月時点において国内の暗号資産の口座数は約681万となっています。この681万という口座数は重複も含まれているとのことなので、681万人が口座を開設しているというわけではありません。

FX(店頭外国為替証拠金取引)においては、税制が総合課税から申告分離課税に変更される法案が参議院本会議にて可決された2011年6月時点における国内の取引口座数は約361万であり、暗号資産口座数はその数を上回っています。

JBA(一般社団法人 日本ブロックチェーン協会)は、暗号資産の税制改正を議論する上で顧客数は重要であると認識しており、暗号資産の利用者数は一定規模に達しているとの見解を示しています。

要望3

最後に、3つ目の要望を紹介します。

要望3:暗号資産同士の交換時における課税の撤廃

個人が暗号資産同士を交換した場合には、その交換の都度、発生した利益について所得税が課税される。ボーダーレスである web3 時代の決済においては、暗号資産同士の交換が経済圏の主流となる可能性が高く、発生するトランザクションや交換する暗号資産の種類が多岐に渡ること等から、納税計算が非常に煩雑になり、暗号資産が本来もつ利便性を著しく阻害している。ついては、暗号資産同士の交換に対する課税を撤廃すること。

3つ目は、申告分離課税と並んで以前から要望の多い暗号資産同士の交換時における課税の撤廃の要望です。

JBA(一般社団法人 日本ブロックチェーン協会)は、暗号資産同士の交換時において利益が発生した場合、その都度、課税計算が必要となるが、納税計算が非常に煩雑になり暗号資産が本来もつ利便性を阻害している可能性があると指摘しています。

世界暗号資産ランキング2022年4Q

Coincubが作成したランキングによると、2022年第4四半期の世界暗号資産ランキングの総合ランキングにおいて日本は15位となっているものの、Tax評価ランキングにおいては64か国中55位となっています。

このランキングでは、日本の暗号資産税制がいかに遅れているかということが示されていると思います。

アンケートの結果

アンケートの結果

それでは、ここからはJBA(一般社団法人 日本ブロックチェーン協会)が暗号資産に関する税制を調査・検討するための基礎資料として活用することを目的に実施したアンケートの結果を紹介していきます。

調査対象は、主にSNS上の不特定多数ですが、ブロックチェーン・Web3関係者が多いと推測されるとのことです。

引用元:https://jba-web.jp/cms/wp-content/uploads/2023/07/20230728_jbazeisei_besshi.pdf

Q1 あなたはどこに住んでいますか。

問1 あなたはどこに住んでいますか。

日本が99%となっています。

Q2 あなたの国籍はどこですか。

問2 あなたの国籍はどこですか。

日本が99%となっています。

Q3 あなたの年収(投資による所得を除く)を教えてください。

問3 あなたの年収(投資による所得を除く)を教えてください。

300万円から700万円未満が47.6%で一番多く、次いで700万円から900万円未満が15.8%、900万円から1800万円未満が13.3%となっており、このアンケートの回答者には比較的年収の高い層が多く含まれていることが分かります。

Q4 あなたの現時点での暗号資産の含み益はいくらですか。

問4 あなたの現時点での暗号資産の含み益はいくらですか。

0円から20万円未満が41.8%で一番多く、次いで20万円から700万円未満が31.6%となっており、大多数は含み益が少ない状態ではあるものの、700万円以上の含み益を抱えている人も一定数いることが分かります。

Q5 あなたが 2022 年に確定させた暗号資産の利益はいくらですか。

問5 あなたが2022年に確定させた暗号資産の利益はいくらですか。

0円から20万円未満が72.2%で一番多く、次いで20万円から700万円未満が18.2%となっており、この2つだけで約90%を占めています。

Q6 上記で「わからない」と答えた方に質問です。わからなかった理由はなぜですか。

問6 上記で「わからない」と答えた方に質問です。わからなかった理由はなぜですか。

こちらの問は、あなたが2022年に確定させた暗号資産の利益はいくらですか、という問にわからないと答えた人に対する質問です。

その他が43.9%で一番多く、次いで取得原価と実現時価のデータが追えなかったからが32.4%、他の暗号資産に交換したからが16.9%となっています。

利益がいくらか分からない理由の4割強がその他となっており、これはおそらくトレードを頻繁に繰り返したことにより利益計算が膨大、または複雑になりすぎていることなどが含まれていると考えられます。また、その他以外の理由も、利益がわからない理由はおおむね利益計算が膨大、または複雑であるということが原因となっているものと思われます。

Q7 あなたが 2022 年に確定させた暗号資産の損失はいくらですか。

問7 あなたが2022年に確定させた暗号資産の損失はいくらですか。

0円から20万円未満が69.1%で一番多く、次いで20万円から700万円未満が20.9%、わからないが7.7%となっています。

Q8 あなたは 2022 年の暗号資産の確定申告をしましたか。

問8 あなたは2022年の暗号資産の確定申告をしましたか。

いいえが67.6%で、はいが32.4%となっています。

Q9 上記で「いいえ」と答えた方に質問です。なぜ、確定申告をしなかったのですか。(複数選択可)

問9 上記で「いいえ」と答えた方に質問です。なぜ、確定申告をしなかったのですか。(複数選択可)

こちらの問は、あなたは2022年の暗号資産の確定申告をしましたか、という問にいいえと答えた人に対する質問です。

利益が20万円未満だったが81.2%で一番多く、次いでその他が18.6%、計算方法が分からなかったが5%、確定申告が必要だと知らなかったが1.7%となっています。

Q10 個人に対する暗号資産の税制は一律 20%の申告分離課税となることが望ましいと思いますか。

問10 個人に対する暗号資産の税制は一律20%の申告分離課税となることが望ましいと思いますか。

はいが96.8%となっており、圧倒的多数が一律20%の申告分離課税の導入を望んでいることが分かります。

Q11 個人に対する暗号資産の税制が一律 20%の申告分離課税になったら、暗号資産の投資額を 増やしたいと思いますか。

問11 個人に対する暗号資産の税制が一律20%の申告分離課税になったら、暗号資産の投資額を増やしたいと思いますか。

2倍以上増やしたいが43.9%で一番多く、次いで21%から50%程度増やしたいが18.1%、1%から20%程度なら増やしたいが13.6%、51%から100%程度増やしたいが10%となっています。

また、増やすことはないが9.9%となっており、この9.9%以外の約90%の人は増やす投資額の割合に差はあるものの投資額を増やすと回答していることになります。

Q12 暗号資産を長期間保有している方に伺います。個人に対する暗号資産の税制が一律 20%の 申告分離課税になり、過年度の損失と通算できる形になれば、保有額の何%までなら利益を確定させ たいと思いますか。

問12 暗号資産を長期間保有している方に伺います。個人に対する暗号資産の税制が一律 20%の申告分離課税になり、過年度の損失と通算できる形になれば、保有額の何%までなら利益を確定させたいと思いますか。

40%から60%未満が21.1%で一番多く、次いで20%から40%未満が18%、20%未満が15%、80%から100%が14.2%となっています。

また、確定させないが14.3%、長期保有していないが11.1%となっています。

Q13 暗号資産同士の交換を 2022 年に何回行いましたか (ユーティリティー・ガバナンストークンの交 換など暗号資産決済も含む)。

問13 暗号資産同士の交換を2022年に何回行いましたか (ユーティリティー・ガバナンストークンの交換など暗号資産決済も含む)。

1回から20回が36.2%で一番多く、次いで全く行わなかったが35.6%となっており、この2つだけで約7割強を占めています。

このことから、あまり頻繁に暗号資産同士の交換が行われていないことが分かります。

Q14 どのような種類のトークンを保有していますか。

問14 どのような種類のトークンを保有していますか。

レイヤー1のトークンが85.1%で一番多く、次いでレイヤー2が48.1%、ステーブルコインが37.2%となっています。

Q15 【任意回答】web3 事業を営んでいる、もしくは参入検討されている方へ。現在実施している(又 は検討している)事業が該当する類型を全て選んでください。※なお、個人の回答と関連するものでは なく、法人を代表してご回答いただく必要もありません。

問15 【任意回答】web3事業を営んでいる、もしくは参入検討されている方へ。現在実施している(又は検討している)事業が該当する類型を全て選んでください。※なお、個人の回答と関連するものではなく、法人を代表してご回答いただく必要もありません。

PoSノード運用が42.8%で一番多く、次いで研究開発が34.5%、トークン投資が30.9%となっています。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回は、2023年7月27日にJBA(一般社団法人 日本ブロックチェーン協会)が日本政府に提出した税制改正要望の内容と、資料とするために実施したアンケートの結果を紹介しました。

おそらく、申告分離課税の導入や、暗号資産同士の交換時における課税の撤廃は、まだ先の話になると思われますが、少しずつ税制改正がなされていっているので、今後に期待したいところです。

暗号資産の税制に関する記事として、自民党デジタル社会推進本部Web3プロジェクトチームが申告分離課税を求める提言をしたという記事を以前に投稿していますので、興味のある方は是非ご覧ください。

<あわせて読みたい>

【暗号資産】自民党内から申告分離課税を求める提言【税制改正】

記事を検索

ブログ アーカイブ

プロフィール

CoinStep


初心者向け仮想通貨メディア

\SNSはこちら/

連絡フォーム

お名前 *必須

メールアドレス *必須

お問い合わせ内容 *必須